原因・主な症状
原因
腰椎椎間板ヘルニアは様々な要因によって起こります。
腰椎椎間板ヘルニアの発症に関与する要因はいくつかわかっています※1が、
現在のところ、単一の原因はわかっていません。
喫煙は腰椎椎間板ヘルニアと関連のある環境因子となっています。
- 喫煙(現喫煙者、喫煙量が多いほどなりやすい)
- 遺伝子(椎間板変性に関連しているといわれている遺伝子のパターンが指摘されている)
- 特定の職業(ヘリコプターのパイロット、宇宙飛行士、医師・医療従事者)
他にも、身体活動が少ないことや脂質代謝異常も関係している可能性があるといわれています。また、体重が重い人の方が腰椎椎間板ヘルニアの手術を必要とすることが多い傾向にあります。
一方、重い物を持つことが腰椎椎間板ヘルニアの原因だと思われがちですが、患者さんの6割にはそのようなきっかけはなく、自然に発症していると報告されています。
また、一部のスポーツ(アメリカンフットボールなど)は腰椎椎間板ヘルニアを誘発する可能性がありますが、スポーツは腰痛の予防に良いという報告もあり、現時点では腰椎椎間板ヘルニアとスポーツの関係はよくわかっていません。
日本整形外科学会、日本脊椎脊髄病学会編:腰椎椎間板ヘルニア診療ガイドライン2021 改訂第3版. 南江堂, 2021
主な症状
腰椎椎間板ヘルニアの主な症状は、足の痛みやしびれ、腰痛です。
多くの場合、片側の足に症状がみられます。太ももの後ろからふくらはぎ、すねの外側などに痛みが走り、痛みの強さには個人差があります。また、両側の足に症状がみられることもあり、足や腰の痛み以外にも筋肉の麻痺(まひ)、足を持ち上げにくい、歩きづらい、足の感覚が鈍くなるといった症状や、重症の場合、尿が出にくいといった排尿障害が起こることもあります。
急に痛みが出ることが多いとされていますが、徐々に痛みが強くなるケースもあります。咳やくしゃみをしたり、いきんだりすると足の痛みが強くなることもあります。
若い人(子ども)では腰痛が出ることが多く、からだを前屈しにくい、太ももの裏側が硬い、痛みのために背骨が横に曲がるという症状が出やすいと言われています。
腰と足にあらわれる症状
- 腰、お尻、足のしびれや痛み
- 太もも裏の痛み
- (腰痛によって)前屈しにくい
- 足を持ち上げにくい、
歩きづらい - 足の感覚が鈍い
悪化するとあらわれる症状
- 足の力が弱い、力が入らない
- (痛みにより)背骨が横に曲がる
- 排尿障害
こんな症状はありませんか?
下記のような症状がある場合には、腰椎椎間板ヘルニアの可能性がありますので医師に相談してみましょう。
- 腰痛がある
- 太ももの後ろからふくらはぎ、すねの外側などに広がる痛みがある
- 足に痛みやしびれがあり感覚が鈍くなる
- 足の力が弱くなり歩きづらい
- 尿が出にくいといった排尿障害がある
- 重いものを持つと痛みが強まる
診断を示すものではありません。医師へ相談する目安にご活用ください。
腰椎椎間板ヘルニアに
似た症状を示す代表的な疾患
腰痛を引き起こす原因の疾患はたくさんあります。
腰椎椎間板ヘルニアをはじめ正確に診断するには、医師の診察や画像検査などが必要です。
参考までに、腰椎椎間板ヘルニアと似た症状を起こす疾患の特徴を示します。
正しい診断を受けるためにも早めに医師に相談するといいでしょう。
疾患 | 主な症状 | 特徴 |
---|---|---|
腰部脊柱管狭窄症 (ようぶせきちゅうかん きょうさくしょう) |
腰痛、足のしびれ、 長距離を続けて歩けない |
背骨の神経が通るトンネル(脊柱管)が、加齢による変性により変形して神経が圧迫され、足の痛みやしびれがでる。 間欠跛行(かんけつはこう)という、歩き始める→痛みで休む→前かがみで楽になる→歩き始めるなどの歩く・休むを繰り返す症状が特徴的。 前かがみの姿勢になった時に症状が楽になるケースが多い。 |
腰椎分離症 (ようついぶんりしょう) 腰椎分離すべり症 (ようついぶんりすべりしょう) |
腰痛、足のしびれ | スポーツによる疲労骨折が主な原因。スポーツをしている成長期の子どもに多い。腰を反らしたり、ひねったりする動きで痛みが強くなる。 放置して進行すると、中年になって腰椎分離すべり症を発症することがある。 |
ぎっくり腰 | 腰痛 | 医学的な病名ではなく、急に起こった強い腰の痛みを指す。多くは椎間における軽度の亀裂といわれる。約1週間以内で痛みが治まること、足の痛みやしびれはないことが多い。 繰り返し椎間が亀裂することで椎間板の変性が進むため、長期間続く場合や、繰り返す場合は、他の病気が潜んでいることもあるので注意が必要。 |
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公益社団法人日本整形外科学会 WEBサイト
岡田英次朗:腰椎椎間板ヘルニアを治す. 法研, 2022