診断・治療

診断方法

腰椎椎間板ヘルニアは、視診、問診、触診、神経学的診察・検査を行って診断されます。

腰椎椎間板ヘルニアの診断は、症状、経過、身体の診察の結果、レントゲン、MRI検査などを総合して診断します。

  • 視診・問診

    視診において、痛みがどれだけ強いのか、歩き方や顔の表情を確認します。また、問診で「いつから痛いか」「どこが痛いか」「どのような症状があるか(痛み、しびれ、動けない等)」「痛みやしびれの種類(鈍痛、刺すような、チクチクする等)・程度」などを確認します。

  • 神経学的検査

    身体をひねったり前かがみになったりして痛みが出るのか、足を持ち上げたり曲げたりして特定の場所が痛くなるかなどを調べます。

  • 画像検査

    X線検査で、腰椎椎間板ヘルニア以外の疑われる疾患を否定したり、MRI検査によって腰椎椎間板ヘルニアの場所、大きさ、形、神経がどれだけ押されているかなどがわかります。

治療方法

主に保存療法、椎間板内酵素注入療法、手術療法の3つです。

腰椎椎間板ヘルニアの治療法は、保存療法から始めるのが一般的です。
腰椎椎間板ヘルニアは自然に縮小したり、大きさは変わらなくても自然に症状がおさまるケースも多いため、まず痛みを和らげる保存療法がおこなわれます。

保存療法で効果がみられない場合、その他の治療が検討されますが、症状が長く続く場合(3カ月以上)や痛みやしびれが強くて日常生活や仕事に支障がある場合、もしくは排尿障害などの症状がある場合には手術を検討することがあります。その他の疾患をお持ちの場合や腰椎椎間板ヘルニアのタイプ、症状によって選択できる治療法は異なります。

  • 保存療法

    安静、コルセットの着用、飲み薬や貼り薬、注射で痛みを和らげます。

  • 椎間板内酵素注入療法

    患部にあたる、椎間板の髄核(ずいかく)内に薬剤を直接注射し、改善を図る方法です。

  • 手術療法

    手術によりヘルニアを取り出し、神経への圧迫を取り除きます。

保存療法

安静、コルセットの着用、飲み薬や貼り薬、注射で痛みを和らげます。

安静

痛みの強い場合は安静を保ちます。
重労働など腰に負担をかける動作を控え、楽な姿勢をとるようにします。
特に発症早期は症状が強いため、安静は有用な疼痛緩和の手段となります。

薬物療法

アセトアミノフェンや非ステロイド性消炎鎮痛薬など、ヘルニア周囲の炎症を軽減することで痛みをやわらげる薬が使われます。また、過剰に興奮した神経を鎮めて痛みをやわらげるCa2+チャネルα2δリガンド阻害薬が使われることもあります。湿布薬や塗り薬などの外用薬を併用することもあります。

理学療法

理学療法は、腰椎椎間板ヘルニアの症状緩和や生活の質(QOL)向上を目的に行われます。このうち運動療法(ストレッチや筋トレ)はからだの安定性や柔軟性、筋力や持久力をアップさせます。牽引療法はヘルニア周囲の緊張をほぐします。超音波療法は皮膚から刺激、振動を与えて温熱・マッサージ作用による痛み軽減、血流促進などを期待するものです。コルセットは腰を安定させ、椎間板にかかる負担を減らします。

神経ブロック

痛みの起こっている神経やその周辺に薬剤を注入して痛みを抑えます。
腰椎椎間板ヘルニアには、腰部硬膜外ブロック、神経根ブロックなどが行われます。

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椎間板内酵素注入療法

ヘルニアのある椎間板内に酵素を含んだ薬剤を直接注射する治療法です。

椎間板の髄核(ずいかく)に適切な量の薬剤を注⼊すると、髄核内の保⽔成分が分解され、⽔分による膨らみが適度にやわらぎます。その結果、神経への圧迫が改善し、痛みやしびれが軽減します。
全身麻酔や皮膚切開は不要で、X線で確認しながら1回の注射のみで終了します。
日帰り又は1~2日の入院が必要な場合があります。

ヘルニアの形態や症状によっては対象とならないことがあります。

アナフィラキシー(アレルギー反応が全身にあらわれること)が起こることがあるので、すぐに対処できるように、投与後数時間から一晩は病院にて過ごすことが多いです。

再投与によりアナフィラキシー等が発現する可能性が高くなるので、2回以上行うことはできません。

患者さんの状況によっては、治療の対象にならない場合もあります。
下記の項目に当てはまり、椎間板内酵素注入療法※1を検討したい方は、まずは主治医にご相談ください。

  • 腰椎椎間板ヘルニアと診断されている
  • 保存療法を行っているが十分な効果が得られていない
  • 椎間板内酵素注入療法を一度も受けたことがない
入院期間の目安
約1〜2日で可能。投与後数時間から一晩は病院にて過ごすことが多いです。

現在、椎間板内酵素注入療法は、椎間板の髄核内に確実に薬剤を注入する技術をもった医師が安全に行える環境の整った医療機関において実施されています。
日本脊椎脊髄病学会、日本脊髄外科学会の脊椎外科の専門医がいる病院で実施されているケースが多いです。

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手術療法

手術によりヘルニアを取り出し、神経への圧迫を取り除きます。

手術は保存療法を3カ月続けても治療効果が得られない場合に行われるケースが多いです※2
手術方法はいくつかあり、直接目で見ながら手術する方法や内視鏡を使用する方法など、手術方法によって特徴が異なります。一般的な手術法(椎間板摘出術)をいくつかご紹介します。
手術の場合、別の病気を持っている場合や、その方のヘルニアのタイプによって選択が異なります。
主治医とよく相談する必要があります。

麻痺(まひ)や排尿障害などがある場合は早くに手術が必要なことがあります。

手術療法 LOVE(ラブ)法※3

LOVE法は1938年にJ. G. Loveが報告した術式で、背中の皮膚を約4~5cmほど切開し、術者が肉眼でみながら靭帯や背骨の一部を切り取って、ヘルニアを取り出します。世界中で標準的な手術方法として行われている、最も一般的な方法です。全身麻酔が必要で、1~2週間ほど入院することが多いです。

内視鏡手術療法 MED(microendoscopic discectomy)内視鏡下椎間板摘出術※3

MEDは内視鏡を使いモニターを見ながら行う術式で、1998年に日本で導入されました。全身麻酔し、背中の皮膚を2cmほど切開して円筒を入れてヘルニアを切除します。ラブ法に比較して皮膚切開が小さく、筋肉内に与えるダメージも小さいので回復も早く、1週間以内に退院できることが多いです。

内視鏡手術療法さらに身体に負担の少ない手術です FESS(full-endoscopic spine surgery)完全内視鏡下脊椎手術※3

FESSはこれまでpercutaneous endoscopic discectomy(PELD),percutaneous endoscopic discectomy(PED)などと呼ばれていて、8mmほどの切開をして細い筒を入れ、ヘルニアを切除するため、体への負担が少ない手術療法となっています。全身麻酔もしくは局所麻酔で行われ、数日以内に退院できることが多いです。 手術には特別な手技が必要なため、実施できる医療機関は限られます。

岡田英次朗:腰椎椎間板ヘルニアを治す. 法研, 2022

入院期間の目安
手術の方法により異なります。数日から2週間程度です。
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腰椎椎間板ヘルニアには様々な治療法があります。
ヘルニアを疑われる方は、まずは医師にご相談ください。